サッカーのドリブルの練習で、
最も基本的なトレーニングとして行われているのが、
並べたコーンなどの障害物の間をジグザグにドリブルする
スラローム練習です。
しかし、専門家によっては“意味がない”“無駄な練習だ”と言う人もいます。
スラロームのドリブル練習は、本当に効果があるのでしょうか?
もし効果があるのだとしたら、
どういう意識で取り組めば、いっそうの上達につながるのでしょうか?
また、スラロームドリブルは、
実戦においてどういった場面で有効なのでしょうか?
ドリブルのスラローム練習の2つのメリットと、得られる2つの大きな効果!
“スラローム”というと、
スキーの好きな人はアルペンスキーの回転競技を、
オートバイに乗る人は免許を取る時に教習所で練習した
蛇行運転のことが頭に浮かぶのではないでしょうか?
一定の間隔で置かれたポールなどの障害物の
左右を交互に通って、ゴールまでのタイムを競う競技名として、
いろいろなスポーツで使われている言葉です。
サッカーでも、進む方向を左右交互に変えながら前進していくドリブルを、
スラロームドリブルと言います。
ドリブルの基本練習の方法として、
初心者から上級者まで、広く取り組まれています。
スラロームの練習がそのように広く行われている理由は、
2つの大きなメリットがあるからです。
1つめは、カラーコーンやマーカーさえあれば、
狭い場所でも、自分1人でも、簡単にドリブルの練習ができることです。
2つめは、人数が大勢いるチーム練習でも、簡単な準備だけで、
短時間で連続した効率的なドリブルの練習や、
ウォーミングアップを行うことができることです。
さらに、この練習から得られる大きな効果が、2つあります。
1つは、ボールを自分の思う方向へと運ぶための、
ボールの扱い方が身に付くこと。
2つめは、自分の体をボールと一緒に
自分の思う方向へと動かしていくための、体の動かし方が身に付くことです。
スラロームの練習は、取り組み方によって効果が大きく変わる!
スラロームのドリブル練習を否定的に言う人達の意見は、
“実戦的でない” “試合で役に立たない”
ということを理由にを上げているのがほとんどのように思います。
これは一理あります。
コーンやマーカーをただ漫然とよけてドリブルするだけの練習だったら、
ボールと体の扱い方は多少上手くなっても、
試合で使えるような技術は身に付かないと思います。
ドリブルの練習は技術を身に付けるために行うわけですが、
何のための技術を身に付けるのかということ、
実戦で役に立つ技術や
試合で使って効果的な技術を身に付けるために行っているのだということを、
絶対に忘れてはいけません。
そのことを常に意識して取り組まなければ、
“無駄な練習”と言われる、ただの“作業”になってしまうのです。
それでは、どのように練習をすると、
スラロームの練習は効果的なものになるのでしょう?
スラロームのドリブル練習は、こうやろう!
スラロームのドリブル練習は、
最初はカラーコーンなどの障害物を2m感覚くらいで、
1列に5~6個以上並べて行えば良いでしょう。
ボールを足元にキープしながら、そのコーンを左右にかわし、
コーンの間を通ってドリブルをしてゴール地点まで進みます。
初めはゆっくりとしたスピードで構わないので、
きちんとコースを外れないように、
ボールをコントロールすることを第一にして行います。
そして、ボールの扱い方を身に付けるためには、
ボールを足元から離さないように、細かくタッチすることを心掛けながら、
ボールに触れる足の位置を、順を追って変えながら行ってみましましょう。
- 右足の裏だけでボールを扱う
- 左足の裏だけでボールを扱う
- 右足のアウトサイドとインサイドだけを使う
- 左足のアウトサイドとインサイドだけを使う
- 左右の足のアウトサイドだけを使う
- 左右の足のインサイドだけを使う
- 両足の色々な箇所を交互に使う
こんな風に課題を設けて行うと、単純な練習でも漫然と行わずに、
ボール扱いの練習になっていることを意識しながら行うことができます。
上手くできるようになってきたら、徐々にスピードを上げて、
それでも正確なドリブルができるように練習しましょう。
スピードを上げると、体の重心やバランスを
どのようにすれば上手くボールと共に素早く左右に移動できるか、
自然とわかって身に付いてきます。
これにも慣れてきたら、
コーンの置き方を等間隔から、広い間隔と狭い間隔を織り交ぜたものに変えたり、
1列に置いていたコーンを、2列にして左右にかわす動きを大きくしたりして、
複雑なスラローム練習も試していきましょう。
最も大切なことは、常に実戦をイメージして、
“自分がかわしているのはコーンではなく、相手ディフェンダーなのだ”
という意識を持って練習をすることです。
そうすれば、ボールを扱うために足元ばかりに目をやっていられないはずです。
視線を上に上げながら、
足元のボールは感覚的に扱えるようになることを目標に、練習しましょう!
それができるようになった時、実戦で生きるドリブルが身に付きます!
実戦におけるスラロームドリブル!
ブラジル代表の10番、FCバルセロナに所属している
ネイマール選手のドリブルを見たことがあるでしょうか?
世界最高のドリブルテクニックを持つ彼は、
自由自在にボールを扱って、
敵チームの選手を翻弄して右に左にとコースを変えながら、
華麗なドリブルでゴールに向かって進んで行きます。
特筆すべきは、そうしたドリブルの間、
彼はほとんど足元のボールに目を落としていないことです。
常に相対する相手ディフェンダーの挙動を注視してドリブルをしているので、
相手の裏を取ってかわしていくことが可能なのです。
こうした一流選手のミッドフィールドでのドリブルの動きをなぞってみると、
ピッチ上でスラロームを描くような軌跡になっていることが多いのです。
ボールを持った選手が右方向にドリブルで進んでいる時、
相手ディフェンダーは同じ方向に向けて走りながら、抜かれまいと守ります。
その動きの逆を突いて、切り返して抜くと、
ドリブルの方向は左方向に変わり、
その先には新たな相手ディフェンダーが現れます。
そのディフェンダーもボールが動いている方向に走りながら守るので、
またその逆を突いて切り返して抜くと、
ドリブルの方向は再び右方向に変わります。
つまり、実戦において
相手ディフェンダーを次々にかわしていくドリブルをしようとする時、
必然的にジグザグに蛇行したスラロームのドリブルとなり、
練習で培った技術がそこで生かされるのです。
相手ディフェンダーをかわすためには、
当然フェイントの技術も必要です。
ネイマール選手も、千変万化なフェイントを織り交ぜながらドリブルをしています。
これは、練習を積み重ねることで、
初めて実戦でも自然にできることだと思います。
スラロームのドリブル練習でも、コーンを相手ディフェンダーに見立てて、
必ずフェイントを入れてから左右にかわすようにしていけば、
実戦でも有効なドリブルがきっと身に付くはずですよ!