あなたは普段、どちらの足でボールを蹴るのが得意ですか?
通常、その人がボールを蹴る時に蹴りやすい方の足を、“利き足”と言います。
サッカーで監督がポジションを決める際には、
選手の利き足が左右どちらなのかということが、
重要なポイントになっていることをご存知でしょうか?
それでは、利き足が右利きの場合と、左利きの場合とでは、
配置されるポジションはどのように変わるのでしょうか?
また、利き足に応じたポジション配置によって、どのようなメリットがあるのでしょう?
逆に、それによって生じるデメリットもあるのでしょうか?
一般的なのは利き足と同じサイドのポジションへの配置!
かつて、FW(フォワード)が攻撃を担当して
DF(ディフェンダー)は守備を担当する…というように、
サッカーのポジションごとの役割分担がはっきりしていた頃は、
監督がサイドのタッチライン沿いのポジションの選手を選ぶ時、
利き足と同じ側のサイドでプレーするように、選手を選んで配置することが一般的でした。
FWの右サイドのウイングであれば、右利きの選手を、
左サイドのウイングであれば、左利きの選手を選ぶ…という配置です。
中盤の左右のMF(ミッドフィールダー)や、
DFの左右のSB(サイドバック)も同様でした。
利き足と同じサイドのポジションの場合の3つのメリット!
監督が、選手のポジションを利き足と同じ側のサイドに配置する際の理由は、
そうすることで次のような3つの大きなメリットがあるからです。
(1)サイドのプレーヤーがタッチライン沿いを縦にドリブルで突破をする時、
タッチライン側の利き足でボールを保持していれば、
相手DFにボールを奪われにくくすることができる。
DFは通常、マークする相手にフィールドの中央側へのドリブルをさせないよう、
マークする相手の内側寄りで守るため、
ドリブルをしている選手は、相手とボールの間に自分の体を入れながら、
ボールをキープすることができて、縦への突破がしやすくなります。
(2)相手DFを縦に抜いた時に、利き足でそのままクロスを入れられる。
より速いサイド攻撃が可能になり、利き足で正確なクロスを入れることができます。
縦への突破が得意なウイングの選手には、特に大きなメリットになります。
(3)守る側の選手は、対面の相手が逆の利き足になるため
(相手の右ウイングが右利きなら、守る左SBは左利きになるため)、
相手の利き足に対して自分も利き足で守ることができ、対応がしやすくなる。
DFにとっても、自分の利き足で相手の利き足を封じることができるのは、
大きなメリットです。
利き足とは逆のサイドのポジションに配置するのが最近の傾向!
サッカーの戦術が進化していく中で、
選手がポジションを流動的に入れ替えながら、
全員で攻め、全員で守るサッカーが主流になってくると、
利き足と逆サイドのポジションに選手を配置する監督が増えてきました。
現在も、そうした傾向が続いています。
利き足と逆サイドのポジションの場合の3つのメリット!
利き足と逆サイドのポジションに選手を配置した時も、
次のような3つのメリットが生じます。
(1)サイドでボールを持った選手が、ボールを利き足で保持しながら、
そのままフィールドの内側を広くルックアップすることができる。
味方や敵の選手の状況を常に把握しやすくなり、
さらに、その状態から利き足で、
ゴールに向かってカーブがかかるボールをクロスとして入れることもできます。
(2)サイドのエリアから、利き足でドリブルをして内側に切れ込む時に、
相手DFにボールを奪われにくくすることができる。
相手DFとボールの間に、自分の体を入れながらドリブルができるからです。
(3)サイドからフィールドの内側に切れ込んだ時、
そのまま利き足で強烈なシュートが打てる。
相手DFも、敵の利き足からのシュートを常に警戒しながら
守らなければならなくなります。
その分、フェイクを掛けて縦に突破することもしやすくなります。
それぞれのメリットはデメリットと裏表になっている
利き足と同じサイドのポジションの場合のメリットと、
利き足と逆サイドのポジションの場合のメリットは、
そのまま、反対の場合にはそれぞれのデメリットになります。
利き足と逆サイドのポジションでは、
利き足でボールを保持して縦に進もうとする時には、
相手DFの目の前にボールをさらしながらドリブルをすることになり、
ボールを奪われやすくなります。
また、利き足と逆サイドのポジションで、
相手を縦に抜いてクロスを上げようとすると、
利き足と逆の足で蹴らなければなりません。
正確なクロスを利き足で上げるためには一度切り返す必要があり、
相手に守備の時間を与えることになってしまいます。
その逆もまた同じで、利き足と同じサイドのポジションの場合は、
フィールドの内側を広く見渡しづらく、
内側に切れ込むドリブルを利き足で行うと、
相手にボールを奪われやすくなります。
また、内側に切れ込んでのシュートを打つ場合には、
利き足と逆の足で打つことになってしまいます。
監督は選手の得意なプレーを考えてポジションを配置する!
こうした、それぞれのポジション配置の方法の良し悪しを前提に、
監督は、個々の選手の特徴や得意なプレーを考えて、
ポジションを決めているのだと思います。
足が速くて、縦へ突破するハイスピードのドリブルが得意で、
正確なクロスを蹴ることができる選手は、
利き足と同サイドのポジションに置いた方がそのメリットが生きるでしょう。
トップスピードはさほど速くなくても、
瞬発力があってターンが得意で、強力なシュートを打つことができる選手は、
利き足と逆のサイドのポジションに置くと相手の脅威になります。
イタリアのACミランで10番を背負う本田圭佑選手が、
左利きでありながら右サイドで多く使われているのは、
まさしくこのケースではないかと思います。
利き足とポジションの関係は監督の戦略によっても影響を受ける!
監督は、自分のチームの選手の能力を見極めて、
相手のチームと総合力を比較した上で、試合で戦う戦略を練ります。
例えば、相手チームの方が総合力で勝り、
攻め込まれる時間が多くなることを予測できた時には、
守備の人数を増やして守りを固めて、
カウンター攻撃で得点を狙う策を採るでしょう。
その場合は、縦への早い攻撃から正確なクロスを入れられるウイングの選手を、
利き足と同じサイドのポジションに配置すると思います。
逆に、自分のチームが相手よりも総合力が上で、
DFの選手もオーバーラップして分厚い攻撃で攻めることができる場合には、
前線のサイドのFWに利き足と逆のサイドのポジションになる選手を配置して、
内側に切れ込むプレーをさせてゴールを狙わせ、
さらに空いたサイドのスペースに後方の選手を駆け上がらせて
数的優位を作って攻める…というような戦略を採るでしょう。
FCバルセロナなど、海外のビッグクラブが採用している
4-3-3の攻撃的布陣の場合は、こうした戦略から、
両サイドのFWを利き足と逆のポジションに置いているのだと思います。
(左利きのリオネル・メッシ選手が右のFWに、
右利きのネイマール選手が左のFWになっています。)
あなたは、自分の利き足と同サイドのポジションと、
利き足と逆サイドのポジションでは、どちらの方がやりやすいでしょう?
いずれにしても利き足でのプレーを磨くと共に、逆の足でのプレーも練習しましょう!
両足で蹴ることができると、
プレーの幅が格段に広がることは、間違いありませんからね!