サッカーボールには、大きさや重さ、材質や性能などが異なる、
様々な種類のボールがあることを、これまで説明してきました。
そんなサッカーボール達の中に、今、
ICチップが埋め込まれたセンサー付きのサッカーボールが製品化されて、
すでに市販もされているということをご存知でしょうか?
どうしてそのようなサッカーボールが作られたのでしょう?
センサー付きのボールを使うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
誤審によるW杯の“幻のゴール”がセンサー付きボールを実用化させた!
2010年の南アフリカW杯。
この大会の決勝トーナメント1回戦、ドイツ代表vsイングランド代表の試合で、
歴史に残る“大誤審”があったことを覚えている方も多いと思います。
イングランドのMFフランク・ランパード選手が放ったミドルシュートが、
ゴールキーパーの頭上を越えてクロスバーに当たり
ゴールの中に吸い込まれたと思いきや、
地面で跳ね返ってきたボールをゴールライン上でキーパーがキャッチ。
審判はこれを、「ノーゴール!」と判定をしたのです。
テレビでリプレイ映像を見ていた人達は、
ボールが完全にゴールラインを越えてゴール内に入っていたことが
容易に確認できたので、この判定には驚きました!
この後、イングランドはこの試合を4-1で完敗。
この幻のゴールが認められていれば、
2-1の状況から同点に追いついて、前半を終えられていたはずのイングランド…。
勝負を左右する、重大な誤審となってしまいました。
これが内外から大きな批判を浴びたことにより、
それまで様々な誤審があっても、
頑なに試合中のビデオ判定などの導入を拒み続けていた
FIFA(国際サッカー連盟)が、この後、方針を改めて、
機械によるゴール判定システムの導入を本格的に検討し始めることとなりました。
そうして日の目を見たのが、
従来もテストで使用されていた、センサー付きのサッカーボールだったのです!
“ゴールライン・テクノロジー”がサッカーの判定を変えた!
実は、センサー付きのサッカーボールは、
アディダス社が2005年にはすでに開発をしていて、
この年に開催されたU-17世界選手権で、このボールを使った
世界で初めてのゴールを機械判定するシステムが、テストされていたのです。
しかし、そのテストの結果、
判定スピードや正確性、設置にかかる時間やコストなどが問題となって、
結局この後は、テストを進めていくことすら“凍結”されていました。
しかし、2010年のW杯を機に、
機械によるゴール判定システムのテストが再開。
2012年7月にFIFA本部で行われた国際サッカー評議会(IFBA)の特別会合で、
主審のジャッジを補助するものとして、改良を重ねた、
最新の2種類のゴール機械判定技術=ゴールライン・テクノロジー(GLT)を、
FIFAとして採用することが決定されました。
これまでの、主審の主観に基づくジャッジのみで決まっていたゴール判定から、
物理的なボールの位置を機械で検出して判定する、
より客観的なゴール判定へと大きく転換する舵をきったのです!
ボールのセンサーでゴールの正確な判定が可能になる!
2012年12月に日本で開催されたクラブワールドカップは、
FIFA主催の大会として、初めてGLTが判定に採用された大会となりました。
この大会で横浜国際総合競技場に設置されたのが、
“ゴールレフ”という、
ICチップを埋め込んだセンサー付きのサッカーボールを使用するGLTシステムでした。
この方式は、あらかじめゴールの周辺に設置した機械によって、
ゴールの中に磁場を発生させておいて、
ボールがゴール内でゴールラインを完全に超えると、
ボール内部のセンサーが磁場に反応して、
電波によって審判の持っている時計に“GOAL”と表示させる仕組みになっていました。
その後、FIFAコンフェデ杯2013での試用を経て、
2014年ブラジルW杯で、GLTがW杯に初採用されるに至りました。
テレビ中継においても、GLTを使ったコンピューター・グラフィック(CG)映像が、
きわどいゴールの判定の際にお茶の間にも届けられて、
そのシステムの成熟度をアピールしました。
しかし、この大会で採用されたGLTの方式は、
多方向から複数の高性能カメラでゴールとボールを撮影して、
その画像解析によって正確なゴール判定を行い、
無線で結果を瞬時に審判に伝えるという、
センサー付きのボールは用いない方式のものでした。
センサー付きのサッカーボールは新しい用途に向けて市販された!
現在、イングランド・プレミアリーグを皮切りに、
欧州各国の主要リーグがGLTによる判定の導入を進めようとしています。
そのGLTの方式も、
“ホークアイ(鷹の目)”という高性能カメラを使った判定システムです。
センサー付きのボールを使ったGLTのシステムは、
今の所、世界のGLTマーケットの主流にはなれない状況のようです。
しかし、アディダス社は、新しい用途に向けて、
ICチップが埋め込まれたセンサー付きのサッカーボールの市販を始めました!
その名も、「miCoach SMART BALL(マイコーチ スマートボール)」!
→アディダスの『マイコーチ スマートボール』の公式サイトはこちら
サッカープレーヤーが、自分でボールを蹴る能力を訓練して、
上達させるために利用できるハイテクツールだというのです!
ボールから得たITデータでキックの技術を向上させよう!
この「スマートボール」は、3軸加速度センサーを内蔵していて、
プレーヤーがボールを蹴った際に、
・キックスピード
・ボールの回転数と回転方向
・ボールのインパクト位置
・ボールの飛行軌道
を瞬時に計測して、Bluetoothの無線でデータを送信することができるのです。
プレーヤーは、iPhoneやiPadで、
アプリを使って自分のキックのデータを手軽に見ることができて、
己れのキックを分析しながら、理想のキックに近付けるように
練習をすることが可能になるのです。
値段は1個3万円以上する高価なボールですが、
これで練習に励めば、
あなたも、元日本代表の中村俊輔選手のような
フリーキックの名手になることができるかもしれませんよ!