4年に一度行われるサッカーW杯の開催前に、
その大会の“公式試合球”が発表されると、毎回話題になりますよね。
近年は、ボールの見た目のデザインの新しさに加えて、
表面を覆うパネルの枚数や形状にも毎回新しい技術が採用されて、
ボールが持つ特性が変化することから、
世界中の代表チームもその動向に注目しているようですね。
では、そうした“公式試合球”というのは、
私たちが普段使っている普通のサッカーボールと、何が違うのでしょうか?
いわゆる“レプリカ”というボールと、“公式球”との違いは何なのでしょう?
サッカーの“公式球”とはどんなボール?
まず、“公式球”というボールがどういうボールのことを指しているのか、
改めて考えてみましょう。
サッカーのボールについては、毎年2月か3月に開催されている
国際サッカー評議会(IFAB)の年次総会において制定される、
“サッカー競技規則(Laws of the Game)”の中に、
その品質と規格が厳密に定められています。
第2条のボールに関する品質と規格の内容は、次の通りです。
- 球形
- 皮革または他の適切な材質
- 外周は、70cm以下、68cm以上
- 重さは、試合開始時に450g以下、410g以上
- 空気圧は、海面の高さの気圧で、0.6~1.1気圧
つまり、この規格を満たしていないボールは、
サッカーの競技規則=ルールにおいて、ボールとは認められない、ということです。
“公式球”という言葉の意味は、
“公式な競技会の試合で使用できるボール”ということだと思います。
公式な競技会は、サッカーの競技規則に則って行われるはずですから、
上記の規格を満たしているボールでない場合は
“公式球”には当たらない、ということになるわけですね。
“公式試合球”とはどんなボール?
では、“公式試合球”は“公式球”と同じではないのか?…というと、
この両者はイコールではありません。
“公式試合球”とは、公式な競技会の主催者が
“公式球”の基準を満たすボールの中から独自の判断で選んだボール、
というものになってくると思います。
サッカー競技規則のボールの条文のすぐ後ろに、
“国際サッカー評議会の決定”という追記が書かれています。
そこには、FIFA(国際サッカー連盟)や各大陸連盟主催の公式競技会の試合においては、
・公式の“FIFA承認(FIFA APPROVED)”のロゴ
・公式の“FIFA検定(FIFA INSPECTED)”のロゴ
・“国際試合ボール基準(INTERNATIONAL MATCHBALL STANDARD=IMS)”のロゴ
のいずれかが付いているボールを使用する、ということが定められています。
これらのロゴが付いているボールは、
FIFAが承認している検査機関の厳しいテストをクリアした
品質の高いボールだからです。
つまり、W杯やその各大陸予選、各大陸の選手権大会などの、
FIFAや各大陸連盟が主催する国際大会における“公式試合球”は、
上記のロゴが付いているボールであることが、最低条件として必要になります。
W杯開催の度に発表されてきた数々の各大会の公式試合球も、
見た目のデザインや表面のパネルの形状は違っていても、
全てこれらのロゴが付いている高品質なボールだった、ということです。
日本国内での“公式試合球”はJFAの検定球!
では、国際試合ではない、
日本国内の大会に使われる公式試合球は、どうなのでしょうか?
先ほど挙げた、サッカー競技規則の中にある追記には、
FIFA加盟各国の協会が主催する国内の競技会においては、
FIFAやIMSのロゴ付きのボールの使用を“要求することができる”と、
一つの選択肢として選べるボールがロゴ付きのボールである旨が書かれています。
国によっては、
高価なFIFAのロゴ付きのボールの入手が難しい場合もあるでしょうから、
これは当然の配慮でしょう。
日本においてはJFA(日本サッカー協会)によって、
国内の公式大会で使うボールについて、
JFAが実施している検定に合格したボールを使用することが、
明確に義務付けられています。
JFAの検定を得ているボールには、
“JFA検定球”または“JFA Approved”のロゴが、
“検定マーク”として付けられています。
このJFAの検定の内容は、
“FIFA検定(FIFA INSPECTED)”の規格に準ずるものになっているので、
FIFAのロゴ入りのボールはJFAの検定を免除されます。
しかし、FIFAのロゴが入っているボールでも、
JFAの“検定マーク”のないボールは、
国内の公式大会では使用できないこととされています。
ということは、日本国内における“公式試合球”とは、
このJFAの検定マークが付いているボール…ということになります!
検定マークやロゴが付いていないボールは“公式球”ではない!
以上、述べてきたことから、日本の国内においては、
たとえサッカー競技規則に定められている品質と規格を
実際にはクリアしているボールであっても、
JFAの検定マークが付いていないボールの場合は、
公式な大会の試合では使用できないので、“公式球”ではない、ということになります!
FIFAのロゴやJFAの検定マークをボールに付けるためには、
ボールメーカーは品質テストを受けるための受験申請費用や、
ロゴやマークの使用ロイヤリティなど、
多額のお金を支払わなければなりません。
そうした費用は製品単価に反映されます。
だから、ロゴやマークのないボールは、極端に安価な場合が多いのです。
その代わり、規格や品質の保証はない…ということになります。
“レプリカ”のボールには公式球とそうでない場合の両方がある!
いわゆる“レプリカ”と呼ばれているボールの中で、
検定マークの付いていないボールは、
サインボールや飾りに使われる観賞用のボールであると考えてよいでしょう。
この場合は、
単純に見た目のデザインだけを国際大会の公式試合球と同じように作った、
品質の保証はない安価なボール…ということです。
一方、国際大会の公式試合球と同じ見た目で、
FIFAのロゴもJFAの検定マークも付いているのに
“レプリカ”と銘打っているボールの場合は、
国際試合用の基準も日本国内での公式試合球の品質規格も満たしていて、
デザインもW杯の公式試合球と同じであるけれど、
ボールを構成する表面のパネルのつくりは一般のボールと同じで、
手縫いのボールである…というようなケースが考えられます。
例えば、近年のW杯の公式試合球は、
私たちが普段使っているような手縫いのボールではない、
より進化した作りのボールなのです!
次回は、そうした“公式試合球”の性能の違いについて、
説明していきたいと思います!