前回、サッカーの公式試合球とは、
サッカー競技規則に書かれている品質と規格を満たし、
FIFA(国際サッカー連盟)やJFA(日本サッカー協会)の検定もクリアして
ロゴや検定マークが付いているボールである…と説明しました。
→“サッカーボールの公式球とそうでないボールとの違いは何か?
では、そうした“公式試合球”には、
実際に使う上でのサッカーボールの性能の面でも、
何か優れている所があるのでしょうか?
そうした公式試合球を、私たちが普段の練習用グラウンドで使っても、
特に問題はないのでしょうか?
そして、小学生が使っている4号球のボールにも、
“公式試合球”というものがあるのでしょうか?
“公式試合球”には完全にウォータープルーフなボールがある!
2006年のドイツW杯の公式試合球、“チームガイスト+”は、
それまでのサッカーボールから大きな変化を成し遂げた、
サッカーボールの歴史上の、記念碑的なボールとなりました。
従来の、革のパネルを手縫いで接合して作ったボールから、
“熱圧着(サーマルボンディング)”という方法で、
革のパネルの継ぎ目を完全に隙間なく接合させたボールへと、進化したのです!
1980年代に、ボール表面のパネルは、材質が天然皮革から人工皮革に変わり、
雨に対しての防水性能が格段に向上していました。
しかし、パネル同士を接合している継ぎ目からの水の侵入は、
どうしても防げませんでした。
それが、この熱圧着技術によって、パネルの接合部は密封されたため、
ボールの完全なウォータープルーフ化が実現できたのです。
これは長いサッカーボールの歴史においても、革新的な進化でした!
昔、雨の日の試合の度に、
水を吸ってしまって、蹴っても飛ばなくなった重いボールに苦労した
年配のプレーヤーにとっては、本当に夢のような話ですよね!
公式試合球の変革が“ブレ玉”を生んだ!
この“チームガイスト+”は、
2種類の異なる形のプロペラのような形状の革のパネルを、
計14枚貼り合わせて作られていました。
今でも一般的な、
五角形と六角形のパネルを組み合わせて作られたサッカーボールは、
計32枚のパネルで構成されていますから、
“チームガイスト+”でパネル数はかつての半分以下になったのです。
それによって、ボールの形がより真球に近くなり、
パネルの縫い目が少なくなることで空気抵抗も減って、
より飛びやすくなるメリットが生じました。
ボールの表面パネルの数は、
続く南アフリカW杯の公式試合球では8枚に、
ブラジルW杯では6枚になり、
パネルの形状も変化を続けていきます。
こうしたボールは、無回転で蹴ることによって生じる、
いわゆる“ブレ玉”のシュートを増やし、
蹴る選手も守る選手も、
予測不能な軌道を描くボールに対応する、高い技術が求められるようになりました。
公式試合球には“芝用”と“土用”がある!
W杯のような国際大会の試合は、
天然芝か人工芝のピッチで行うことが定められているため、
その公式試合球は、芝専用のボールとして作られています。
“芝用”のボールは、内部の空気が入っている部分が、
天然ゴム製のラテックスチューブというもので作られていて、
弾力に富んで、非常に良く弾む特徴があります。
軟らかい天然芝のピッチでも、ボールが適度に弾み、
また、強く蹴ると非常に良く飛ぶのです。
初めて芝用のボールを蹴った人は、その飛びの良さに驚きます。
このボールを固い土のピッチで使うと、逆に弾み過ぎてしまうので、
上手くコントロールができなくなります。
また、ラテックスチューブには、中の空気が抜けやすい性質があるため、
頻繁にエア圧の調整が必要です。
耐久性に劣ることから、激しい練習用に使い続けたら長くは持ちません。
かたや、“土用”のボールは、
内部のチューブが合成ゴム製のブチルチューブというもので作られています。
ブチルチューブは弾力性には劣り、軟らかい芝のピッチではあまり弾みません。
その代わり、固い土のピッチではちょうど良く弾みます。
耐久性も高く、エアも抜けづらいので、激しい練習でも長く使うことができます。
“土用”として販売されているボールにも、
FIFAのロゴもJFAの検定マークも付いた、
国内外の公式な試合で使用可能なボールはあります。
もしあなたの普段サッカーをしているグラウンドが土のピッチだとしたら、
土用のボールを使った方が楽しくサッカーができるはずです。
芝用の公式試合球は、やはり芝のピッチ以外では使わない方が良いと思います!
小学生用の4号球にも公式試合球はある!
サッカー競技規則の中で具体的に定められている品質と規格のボールは、
中学生以上の年代が使う5号球のサイズのものです。
しかし、サッカー競技規則では、
16歳未満の競技者の試合で使うボールの大きさ・重さ・材質について、
関係するFIFA加盟各国協会の合意のもとで、
規則に修正を加えることを認めています。
小学生に当たるU-12の年代にも、
ダノンネーションズカップなどのFIFA公認の国際大会があります。
その公式試合球は、4号球の規格のボールとされています。
日本ではJFAが、小学生用の4号球についての規格を定めて、
検定制度を設けています。
ボールメーカーもそれに基づいて
検定マークの付いた4号球を作って販売しています。
JFAが主催する、2015年の全日本少年サッカー大会・決勝大会で使われる
モルテン製の公式試合球は、
表面パネルの形状は一般的な五角形と六角形の組み合わせですが、
パネルの接合に4号球として初めて、熱圧着の技術を採用しています。
真球性に優れて、超低吸水性を実現している、
小学生用の4号球のスペシャルなボールです!
子どもへのプレゼントに、買ってあげたらきっと喜ぶと思いますよ!